淡色の空

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バレンタインSSまとめ【第二.五弾】

つい先日まで行っていたバレンタインSSの企画ですが、
実は第三弾まで予定していたはいたものの、
UPするSSの個数がどうしても足りなかったとかいう裏事情が(ry

もう明らかに時期を逸していますが、せっかくなので
ストックしてあった分のSSまとめをこっそり投下しておきます。
まとめと言っても、幽香さんと妖夢の二個しかありませんがww

しかし、妖夢のはちょっと弄ればヤンデレルートにもなったような気が……。

まぁ、前置きは置いといて以下より~。


【目次】
幽香

妖夢







【幽香】

毎年、雪が降る季節になると、花の大妖怪は香霖堂を訪れる。
雪が融け、生命の息吹が芽生える春に備え、園芸用の道具を買うためだ。
そして彼女は、他の多くの妖怪と同じように気紛れであるため、冬のいつに来るかは分からない。
――それが、今年はたまたま『今日』という日だっただけにすぎない。

「そう言えば、ここに来る前に人里にも寄ってきたんだけど、今日は何かお祭りでもあるのかしら?」

いつもの冬のように、霖之助へ園芸用品を注文し、悠然と出されたお茶を片手に幽香は、ふとそんな事を呟いた。
その言葉に、ごそごそと商品棚を弄りながら霖之助は答えた。

「いや、特にそういった行事はなかったはずだが……何か催し物でもしていたのかい?」
「別にそういうわけではないんだけど。里全体が、というわけでもなかったけど、妙に落ち着かない雰囲気が広がっていたから」
「ああ……なら、それはもしかすると、今日が如月の十四日であるということだからじゃないか?」
「ふーん? どうして『今日』だとそういうふうになるのかしら?」
「……そうか、君は知らないのか。まぁ当然と言えるかもしれないが」

幽香くらいの大妖怪ともなると、人間の持つ風習や行事などに全く興味が向かないのだろう。
だがそれも当然かもしれない。
元々妖怪から見れば人間は食料であり、食料にそれ以上の価値を見出すことは、普通はしないからだ。
天狗や河童のような人間との距離が近い妖怪ならともかく、幻想郷縁起に『人間友好度:最悪』とまで書かれる幽香が、人間の行事に自分から興味を示すということもないだろう。

「今日は『バレンタイン』という、古代の聖人を起源とする日なんだ。その昔、西欧の聖職者だったウァレンティヌスが――」
「ああ、薀蓄はいらないわ。長いから。それがどういう意味を持つ日かだけ教えなさい」
「……どういう意味を持つか、それに密接に関わってくる話なんだが、まぁいい。掻い摘んで言うと、今日は主に女性から男性にチョコレートと言う菓子を贈る習慣がある日なんだ。しかしただ贈るだけじゃない。贈る事自体が、この日は親愛や愛情を示すことにもなるんだ。……しかし、この習慣そのものは日本独自のものでね。本来は――」
「だから、薀蓄はいらないって言ってるでしょう? それだけ分かれば十分よ」
「……君もつくづく、人の話を聞かないね」

はぁ、と、霖之助は隠すことなく大きな溜息を吐く。
――尤も、こういった幽香相手のやりとりなど、当の昔に慣れてしまっている。
こちらの話を『長い』と言って一刀両断するのは、昔からずっと変わっていない。
悲しいが、慣れというものに任せてしまうのが、幽香とのやり取りでは最も実害なく済ませられる方法なのだ。

「そういうわけで今日は贈る側も贈られる側も、妙に落ち着かなくなるのも仕方がないのさ。女性は贈る緊張で、男性は貰えるかどうかの緊張があるわけだからね」
「そう。……ま、人間らしいと言えばらしいわね。下らないと言えば下らないけど」
「はは、相変わらず辛辣だね。まぁ、君ならそう言うと思ったがね」
「……ふーん? それは、私には情緒も感情も風情もないって、そう言ってるのかしら?」

霖之助は幽香に背を向けているが、見ずとも幽香が威圧を込めた視線を送ってきているのが、背中でも感じられる。
幽香を知らない並の妖怪や人間なら、それだけで恐らくは竦みあがってしまうような視線だろう。
だが、霖之助は顔色一つ変えずにそれを背中で受け止めながら、身体全体ではなく、肩だけを竦めて、溜息を吐いた。
この程度でいちいち竦み上がっていたら、この風見幽香という人物とはまともに冗談も言い合えないのだ。

「そうは言っていないさ。今までの長い付き合いの上で、君ならそう言いそうだと思っただけだよ。……ほら、ご注文の品だ」
「……まぁいいわ、ありがと。代金はいつもと同じでいいわよね?」
「ああ、構わないよ」

ごとり、と霖之助はカウンターへ植木鉢と外の世界の液体肥料を置き、幽香はいつも支払っている分の代金を置く。
この辺りのやり取りも既に慣れたもので、幽香は置かれた道具の確認もしないし、霖之助も代金の提示すらしない。
幾度となく行われたやり取りに、改まったものなど必要ないのだ。
――だが、今年は少しばかり、違った。

「ああ、それとこれはおまけさ。受け取ってくれるとありがたいんだが」

鉢と肥料の横に、霖之助は随分小奇麗な包装をされた緑色の小箱を添えた。
いつもはないはずのそれを、幽香は怪訝そうに掴み取る。

「……何かしら、これ? 」
「さっき言っただろう? 今日はバレンタインという日だと。日本では女性から男性にチョコを贈るのが主だが、日本以外では男性から贈ることもある。それに、親愛や愛情の他に、友情や日頃の感謝を示すためにも渡すことがあるそうだ。だから、今日は店で買い物をしてくれた人には、普段からの愛顧の感謝を込めて、それを贈ることにしたんだ」
「へぇ、そう。……貴方の場合、在庫が余ってるから、これ見よがしの理由で渡してるとしか思えないわね」
「……そんな事はないさ。たった今、言ったばかりだろう? 友情と日頃の感謝を示すためだと」

内心ぎくりとした霖之助だが、それは顔に出さないよう、最大限の努力を行う。
――在庫が多少余っていたのは本当だが、それの処理が主目的でないのも確かである。
この店を『客』として利用する人物は、店主としては非常に悲しいがごく僅かだ。
そのごく僅かな顧客に感謝を示すのも、商売人としては何一つ不自然なことではない。
そう、決して在庫処理が目的ではないのだ。
それはあくまで副産物であり、二の次なのである。

「そうでなくとも、君は昔からの僕個人の知り合いで、きちんと対価を以って取引が出来る相手だ。愛顧の感謝はともかく、永い友情を示すのに、僕としては不自然も不都合もない。そう思ったんだが」
「……まぁ、それもそうね。いいわ、貰ってあげる」

持っていた箱をまたカウンターへ置きながら、幽香は頷く。
霖之助の言葉に怪しさを感じるのは変わっていないが――しかし、貰って不快というわけでもない。
いつも言葉足らずな目の前の半妖が、明確な意図を持ってこれを渡してきたのだ。
人間の行事に託けて、というのが少しばかり気に入らないが、込められた意図自体は悪いものではない。
――まぁ、あくまで『悪くない』だけであって、決して『最良』ではないのだが、そこは不問としよう。

「……けど、二月の十四日にそんな意味があったのね。今年はこうして貰ったわけだし、来年は貴方くらいにはあげてもいいかもね。ま、その時は精々期待しなさい」
「ああ……。ふむ、ここで別に期待していないと言うと後が怖そうだ。適度に期待させてもらう、と答えておこうか」
「一言余計よ。そんなに私を怒らせて、死にたいのかしら?」
「まさか。適度に期待させてもらう、と言ったばかりだろう? 自分の言った事を反故にする気かい?」
「……ふん。相変わらず口だけは達者ね」
「これでも商売人だからね。不思議なことに、僕をそう扱ってくれる人物はごく僅かなのが悩みだが」
「……この店の中を見て、応対する店主の態度を見て、何の疑いもなくそう思えるのは、きっと狂人だけよ?」
「これは手酷いな」

薄く笑いながら、霖之助は自分の湯飲みに緑茶を淹れる。
二人、ともに向き合いながら、茶を啜る。
――そこには、長い付き合いから来ているのだろう、穏やかな空気が確かにある。
幻想郷縁起の記述をまともに信じている人物が見たら、恐らく驚愕するような情景だろう。
こう落ち着けるような場所は、幽香にはそうそうない。
自宅か、自宅以外だったら、あっても思い出すのも困難な程度の数くらいしかない。
だが、この店は思い出すのも容易で、実際それほど多くはないが足を運ぶ場所でもある。
だから――。

「しかし君だって、ここを店と認識しているからこそ、対価を払って道具を買いに来ているんじゃないのかい?」
「それは、私は一見じゃないからよ。霖之助が里で奉公していた頃から知ってるわけだし、どういう人物かも知ってる。だから、ここを店として認識出来ている。そうじゃなきゃ、どう見てもここは店には見えないわ。……まぁ、形式ばっていないせいか分からないけど、ここにいると落ち着くのは認めてあげるけど」
「はは。魔理沙も同じような事を言っていたよ」

――だから、幽香は珍しく、自分から『来年はお返しをしてもいい』ということを宣言したのかもしれない。
割と居心地の良いこの場所の主である、捻くれた半妖へ。
友情と、告げてやってもいい日頃の感謝と――後は、少しだけ整理のつかない、名前のつかない感情を込めて。





【妖夢】

「……」

ふよふよと自由に動いている半霊とは正反対に、妖夢は固まっていた。
どこで、と問われれば、香霖堂店内で、と答える他ない。
実際ここは冥界ではなく、幻想郷の魔法の森入り口にある、一見すればゴミ屋敷にしか見えない香霖堂の中だったのだから。
――だが、別に妖夢はまた雪に埋もれていたわけではない。
屋根から雪が落ちてくることもなく、普通に店内へ入った妖夢が見たのは――本を片手に、数個の綺麗に包装された箱を眺めている、無愛想な半妖店主だった。
その店主が、ドアが開閉する時に響くカウベルの音に、ついと妖夢へと視線を向ける。

「……? ああ、君か。いらっしゃい」
「あ、は、はい」

さ、と妖夢が手を後ろに回すのと同時に、ぱたん、と背後でドアが閉じる。
それがやけに、妖夢には大きく聞こえた。
店に入る前までは文字通り勇んでやって来たはずの妖夢だったが、今はこれ以上下がれないというだけで、妙に不安が募る。
一方、霖之助はとりあえずの来客ということで、持っていた箱を置き、まとめてカウンターの邪魔にならない場所へと移動させる。
ただ、それでも本だけは手放さないのは、さすがと言うか相変わらずと言うか。
そんな事を、何とかいつも通りに動いている頭の片隅で、妖夢は思った。

「……それで、いつまでそこに突っ立っているつもりだい? 用があって来たんじゃないのか?」
「え、あ、ええ……」

ずっと動かない妖夢を怪訝に思ったのか、霖之助はそう声をかける。
それが起爆剤となったのか、どこか弱々しい足取りで、妖夢は一歩ずつカウンターへと歩み寄る。
――その目は、脇によけられたあの箱たちへと向いたまま。

「ところで、今日はどういった用だい? とは言え、また白玉楼の姫に頼まれたお遣いなんだろうが」
「……えぇと……」

――それぞれが、綺麗に飾られた箱だった。
さすがに妖夢にはどれが誰からのものかは分からないが、その殆どの箱が、妙に印象的な輝きをもって妖夢の目には映った。

――ここで妖夢に諧謔の素質がもう少しあったのなら、その貰った小箱――チョコレートの数に対して、冷やかしやからかいを口にする事が出来たのかもしれないが、妖夢にそれを求めるのは、些か時期尚早にして酷なことだろう。
ただ分かるのは、そう少なくない数の『今日』という日のための贈り物を、既に霖之助は受け取っていたということだけである。
そう、すぐそこに置かれている箱の数だけ――。

「――」

そこではた、と、妖夢は気付いた。
いや、気付いてしまった、とでも言うべきなのだろうか。
――既にいくつか貰っているという事は、もう霖之助は何度か、今の妖夢と同じように来客を迎えたということだろう。
なら、妖夢が一人で香霖堂を訪れた理由も、少しくらいは察しがついてもいいはずなのではないのだろうか。
だというのに、霖之助の態度には少しも変化がない。
いつも通り。
そう、いつも通り、妖夢が白玉楼からのお遣いに来たと心底疑っていないように見えた。
――別に、期待していて欲しかった、というわけではなかった。
そんな霖之助は想像も出来ないし、また本人の性格ゆえに絶対に有り得ないと分かっていたから。
だが、表情も何一つ変えず、平然といつもと同じように接してきた霖之助に、妖夢は段々と腹が立ってきた。
普通なら自分が異性から貰ったチョコレートを見られたら焦るだろうに、そうした素振りが一切なかったことも、妖夢の不機嫌への変化に更に拍車をかけた。

――私は、最初からカテゴリーの外ですか……。

何とも思われていない。
そう暗に言われているようで、妖夢はぷっくりとその頬を膨らませた。
確かに、妖夢は霖之助と比べたら、遥かに未熟に映るかもしれない。
性格も――そして、体つきも。
しかし、だからと言って、この扱いはあんまりではないだろうか。
――そう思った時には、あれだけ引っ込んでいたはずの勢いが一瞬で振り切った。

「……はい、これどうぞ!」

だん! と、勢いよく妖夢は後ろ手に持っていた箱を叩き付けた。
中のものが崩れるとか、そういう事は既に妖夢の頭から消えていた。
ただ腹が立つ、その感情に任せた勢いでそうしていたのだ。

「ん? これは?」
「チョコレートです! もう店主さんは一杯貰ってるみたいですけど!」
「あ、あぁ……貰った事には素直に礼を言うが……何でそんなに怒っているんだい?」
「自分の胸に聞いてみてください! ご自分の事なんですから、そうしたら分かるでしょう!」

ぷりぷり怒りながら、妖夢はくるりと踵を返すと、すたすたと足早にドアへと向かう。
そんな後姿に、首を傾げているのは霖之助と半霊である。

「……?」
『――?』

互いに向き合いながら、霖之助と半霊は同じように小首――半霊の場合、どこが首かは分からないが、暫定的に首のようなところ――を傾げた。
その様子を見る限り、半霊にも妖夢が突然不機嫌になった理由は分かっていないようだ。
これまでも何度か、霖之助の知り合いの少女たちが訳も分からずに機嫌が悪くなることがあったが、突然さでは間違いなく今まで一番だろう。
考察しようにも、殆ど会話すらしていない上でこれでは、その余地すらもない。
考えようにも分からない。
そして、分からない事は考えないのが一番である、と思ってはいるものの、ここまで訳が分からないと流石に不気味である。
――ふと。
足音荒々しく踵を返していた妖夢が、ぴたりとドアの前でその足を止めた。
そして振り向きざまに、まるで仇敵でも見つけたかのような目で――かつ、微妙に湿気が多くなったようにも見える目で――霖之助を睨みつけ。

「……どうせ、私は店主さんにしてみたら半人前ですよ!」

今まで霖之助が聞いた中で最も大きな声で叫びながら、妖夢は乱暴にドアを開き、店を後にした。

『――!』

置いていかれたことに遅まきながら気付いた半霊が、やはり訳が分からなそうに後を追いかけていくのを、霖之助はいつもの定位置に座って、殆ど呆然と眺めていた。
後に残ったのは、妖夢が乱暴に叩き付けていった、バレンタインチョコレートの箱だけだった。

「……?」

何が何だか分からず、結局怒った原因については何一つ手がかりを残さないまま、妖夢は帰っていってしまった。
――とりあえず、妖夢が怒っていたのは、あの様子を見る限り確実ではあるようだ。
しかし、少なくともこの店に来た時点では妙にしおらしかったため、あの時点では怒っていなかったと考えるのが自然だろう。
妖夢がああなってしまったのは、霖之助が用件を聞いて少し経った後だった。
となると、やはり霖之助の言葉に原因を探すのが最も当然の道筋ではあるが、一体どの世界に店主に店に来た用件を聞かれて怒る輩がいるだろうか。
考えれば考えるほど、訳が分からない。
ただ、最後に妖夢が残していったセリフだけを考えるのならば、少なくとも霖之助が思い当たる節は、これだけだった。

「……あの子は、まだあの雪掻きの件を根に持っているのか?」


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コメントコメント


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しらない間にゆうかりん とようむりんが・・・
これからも期待しちゃいますよ
勝手に

dact | URL | 2011/03/02 (Wed) 05:06 [編集]


バレンタインはバレンタインssが続く限りバレンタインだと、どこかの巨匠が仰ってました。
それはいいとして、幽香と妖夢も押さえる淡色さんに、隙はないということは確かです。
幽香はこういったちゃんとした常連っぷりがよく似合いますね。最後に気付いた名もない感情に無限大の可能性と、底知れぬ期待感を感じました。
妖夢はこの自己完結してしまう癖を治せば、多少は進展で着ると思うんですが…、そこが半人前の残念なところでもあり、可愛いところでもありますね。
どちらも素敵なバレンタインssでした。

姫街道 | URL | 2011/03/03 (Thu) 03:43 [編集]


諸事情により感想が掛けなかったので、こちらにて纏めて感想を。

リクエストの慧霖を書いて下さり、有難う御座いました。ああいう幼馴染な展開が自分は大好きですっ。

ヤマ霖も素晴らしく、ゆうかりんも可愛かったです。

そして、十二作ものバレンタインデーssを書いた貴方を純粋に凄いと思いました。
それだけの数を書ける能力と、そして同じ数のホワイトデーssを書き上げるという覚悟が。

砂糖リバースする様な大量のSS,子馳走様でした!

唯 | URL | 2011/03/08 (Tue) 23:33 [編集]


 
 

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