淡色の空

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ようこそ、卯年の未来へ

かなりお久しぶりです。淡色です。
色々と忙しかった上に、今までにないスランプで大分ご無沙汰になってしまいました。
申し訳ないです、ハイ。

このGWで大分時間がとれそうなので、今後はしっかりネタを考えていきたいところです。
先日、求聞口授を入手し、『ナズー霖始まった!』とか
『星霖のネタ思いついた!』とかになっているので、今後も気合いれて頑張りたいとオモイマス。


さて、そんな前置きとは全く関係ありませんが、今回はてゐ霖です。
正月付近に投稿した【さようなら、卯年】に、続編のネタをちょっと頂いたので、
それを私なりにいじくって出来た後日談になります。
流れ的に【さようなら、卯年】を読んでいないと中々厳しいかと思うので、
もしよろしければそちらもご一読の上、お進みください。

それではいつものように以下より~。

(霖之助、てゐ(、霊夢、魔理沙))

今年もそれなりに厳しかった冬も峠を越え、その勢力が消滅しつつある時期になった。
こうして冬を終えて毎回思うのが、やはり春はいい季節である、ということだ。
まずこの程よい暖かさが、春の何よりの恩恵だろう。
冬は冬で、燃料さえ枯渇しなければストーブがあり、炬燵や火鉢もあるのでそれなりに暖かくは過ごせるのだが、そのどれもが自然の暖かさではない。
故に、この自然な暖かさが何よりも有り難いのである。
そうして暖かくなれば、自然と眠っていたものたちも目を覚まし始める。
代表的なものは、何と言っても梅や桜といった春の花たちだろう。
こうして暖かくなっても外に余り出る機会がないので、他の桜がどうなっているのかを目にする機会は少ないが、香霖堂の裏にある桜には例年のように純白の花びらが綺麗に花開いていた。
自宅のすぐ裏に綺麗な桜が咲いていれば、それを肴に一杯空けるのは寧ろ当然の流れである。
月と白桜を肴に手酌をしたが、あれは随分と趣深い、いい酒宴であった。

――とまぁ、主催者ただ一人の酒の席だったとは言え、霖之助ですら既に春の権化を眺めて杯を傾けるような時期だ。
霖之助以外の人物が同じような行動をしている事は、火を見るより明らかだった。
事実、霖之助がそうやって裏の桜を肴に飲むより以前から、幾度か霊夢や魔理沙から宴会の誘いはあった。
しかし二人が主催する宴会というのは、基本的に彼女達の顔の広さも相まって大騒ぎのものにしかならないのが殆どだ。
そんな場所に、霖之助のような珍しい存在がのこのこと紛れ込んだらどうなるか。
……その先は、想像に難くない。
故に、いつもかなり渋られはするものの、その全てを丁重に断っておくことでその惨禍を何とか回避してきたが、いつ無理に引っ張り出されるか分かったものではない。
だから今日も揃って香霖堂にやって来た二人に内心、不安な気持ちを僅かながら感じていたのだが、幸い今のところその話が切り出されてはいない。
――いない、のだが。

「――はぁ。お酒もいいけど、やっぱりここで飲むお茶は美味しいわね」
「後はもうちょっとグレードの高いお茶菓子が出れば最高なんだけどな。……おっと、最後の煎餅は貰ったぜ、香霖」
「……ここは茶店じゃないんだが」

その代わりとでも言いたいかのように、余りにもいつもどおりの二人の素行に口を衝いて出るのは、やはり溜息だった。
久しぶりに宴会への誘いをして来ないから面倒がない、と思っていたつい先ほどまでの自分に喝を入れてやりたくなる。
結局、どっちにしても多少の面倒がのこのことついて回るのが、この二人なのだから。

「茶店ねぇ。古道具屋じゃなくて、いっそのことそっちに転職してみたらどうかしら? 霖之助さん、お菓子作りとか意外と上手だし」
「悪くないかもな。立地条件は色々と最悪だが」
「ほぅ。もし仮に香霖堂が茶店になったとしたら、今までの茶代はきっちり払ってくれるのかい?」
「気が向いたらね」
「気が向いたらな」

ずず、と示し合わせたかのように、二人同時に湯呑みを傾ける。
『苦々しい』や『憎たらしい』を通り越し、余りにもいつも通りのやり取りには、もはや溜息しか出てこない。
帰れと言って聞いた試しもないので、半ば諦めているのがいけないのだろうか。
――とは思うものの、何か意趣返しを咄嗟に思いつくわけでもない。
仕方なく、如何にも不満だと見せ付けるかのように自分もいつもより大きめの音を立ててお茶を啜る。
尤も、それでこちらの不満に気付けるような精神をこの二人が持ち合わせているのであれば、そもそもこんな苦労はしないのだが。

「……ふぅ」

溜息を吐きつつ、カウンターへ湯呑みを置いた。
そしてそのまま、何気なく窓の外を見遣ってみると、気持ちいいくらいの暖かな日差しが差しているのが目に入った。
外は相変わらず、気持ちいいくらいの春の陽気らしい。
――季節の特徴にまで言いがかりをつけるのもナンセンスではあるが、出来ればそんな陽気を少しでも分けて欲しいくらいである。
例えば、そう。
久しぶりのまともな来客であるとか、思いもかけない吉報であるとか、そういうのがいいのだが。

――からん。

何となしに霖之助がそう思ったのと、来客を告げる音が殆ど同時に重なったのは、何かの偶然だったのだろうか。
つい先程に二回聞き、そのどちらもまともな来客ではなかったその音に、店内にいた三人の視線が自然と香霖堂唯一の出入り口へ向けられた。
――そんな注目が集まるドアからぴょこんと出てきたのは、ひょこひょこと揺れる、真っ白い兎の耳だった。

「やっほー。……って、何だ。あんたたちもいたんだ」
「あら。ここでは初めて見る顔ね」
「だな。珍客なんてもんじゃないぜ」

ひょっこりとドアから顔を出したのは、他でもないてゐであった。
彼女はここの主である霖之助の他に二人の存在があるのを認めると、少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
別にそう驚くことでもなかろうに――そう思いかけたが、そう言えばてゐはこの二人とここで鉢合わせたことはなかったか。
霊夢と魔理沙の来店頻度がかなり多いので、一度も顔を合わせたことがないのは奇跡のようにも思えたが、てゐ自身もそんなに多い頻度で来ているわけでもないので、冷静に考えれば今まで鉢合わせていない方が妥当だろうか。
それでも違和感を払拭できないのは、てゐが来店すると大抵色々と――悪戯やら何やら、本当に『色々と』やらかしていくので、頻度の割に来店時の印象が深く残っているせいだろう。
――そう言えば、こうして彼女の顔を見るのは『あの一件』以来になるだろうか。
彼女とは『前回』の別れ際のやり取りの件があるので、むしろ今まで何の音沙汰もなかったのが不思議というか不気味だったのだが、こうして顔を見ると、特にどこも変わったところはなさそうに見える。
相も変わらず、頗る壮健のようだ。

「久しぶりだね、てゐ。今日はどうかしたのかい?」
「ん、ちょっと買い物――とは違うか。まぁ、言葉としては物々交換が一番近いんだけど、それを頼みにね」
「……物々交換?」
「そう。で、それを頼む代物がこれなんだけど」

とことこと店の奥へと歩み寄り、てゐは持っていた包みをカウンターへと置いた。
――外観の大きさそのものは、少し大きめの茶器が入る程度の箱といったところだろうか。
風呂敷に包まれていることもあって、ぱっと見ただけではその程度のことしか分からないが、どことなく気品さを感じる。
彼女が物々交換に持ち出すものにしては、中々のものであるようだ。

「ふむ。……中を検めても?」
「そりゃ勿論。見てもらわないと始まらないさね」

てゐが頷いたのを見て、霖之助もその包みへ手をかける。
――風呂敷を開いてまず出てきたのは、やはり霖之助の思い浮かべていた通りの大きさの箱だった。
尤も、それはただの箱ではない。
見た瞬間に高級感を相手に与えるであろう、真新しい桐箱だ。
そんな箱の中に収まっているというだけで、最初に感じた気品さに加え、不思議と中の物がそれなりに価値のあるもののようにも見えてくる――が、言うまでもなくこの時点で先入観を持つのは時期尚早である。
まだ品物を見ていないというのは勿論のことだが、それ以上に、これを持ち込んだ相手がてゐであるという事実が何よりも大きい。
彼女の詐術や悪戯に、霖之助も不覚ながら幾度も引っかかったことがあるからだ。
なので、そういった外観から得られる情報はまず置いておき、その中の物を確認すべく、その蓋を取った。

「……これは」
「なあなあ香霖。一体何が入ってたんだ?」

そうして箱の中を目にして、一瞬霖之助の動きが止まった。
その様子が物珍しく映ったのか、または元々てゐが持ってきた品に興味があったのか、ぴょこぴょこと魔理沙が跳ねるようにやって来て、箱の中を覗き込でいた。
――中に収まっていたのは、盆栽のようにも見える、一つの鉢植えだった。
だが当然、こんな桐箱に収まっているのだから、ただの鉢植えであるはずがない。
僅かに土から見える根の部分は銀色で、幹や枝は金。
そしてその枝に成る実は、色が少々くすんでいるが真珠に相違ない。
明らかに自然の鉢植えとは異なる代物であるが、こんな異質な特徴をしている鉢植えなど、能力を使うまでもなく霖之助は一つしか知らない。
これは、まさしく。

「お? 何か盆栽っぽいやつにしては無駄に高そうだな。輝夜が持ってる蓬莱の玉の枝に似てなくもないが、何なんだそれ」
「……これはね、魔理沙。君の言ったとおり、かつて車持皇子からかぐや姫に献上された、蓬莱の玉の枝『だった』ものだよ」

――竹取物語において、蓬莱の玉の枝を探すよう言われた車持皇子は、その贋作を作成し、かぐや姫へと献上した。
そこでとある事情から贋作と看破されてしまうという話は、恐らく誰でも知っていることであろう。
当然、それは魔理沙も、そして無関心そうにお茶を啜っている霊夢でも知っているはずだ。
だからこそ、次に魔理沙から来るであろう質問は、霖之助には簡単に予想できた。

「んん? でも本物は確か輝夜が持ってるんじゃなかったか? じゃあそれは偽物じゃないのか?」
「確かにあの御伽噺の中で献上されたものは贋作だった。勿論、これもそういう意味では偽物だが――これは僕の見立てでは、その時に献上された贋作の『本物』だよ」

その鉢植えの所々にある、恐らくは悠久にも似た経年によるであろう劣化や、この道具の持つ『蓬莱の玉の枝』という名称、そして『かぐや姫に献上する』という、今も変わらぬ用途。
それらを統合して導き出される結論は、『贋作の本物』であった。
あの姫にしては、地上人の作った単なる贋作に対しては余りにも物持ちが良すぎるので、若干の疑惑はあるものの、その名称と用途にまで嘘を吐ける者はまずいない。
色々と他人からは言われるが、自身の能力に対しては霖之助にもかなりの自信がある。
その判断が、『これがかの有名な贋作である』と言っているのだ。
間違いなどあろうはずがない。
――そしてその判断に、これを持ってきた本人であるてゐが、大きく頷いた。

「そ、流石は霖之助だね。それ、姫様が昔に貰った贋作らしいよ。本当のところは姫様しか知らないけど、多分本物だと思う。結構ボロっちかったし、それを入れる新しい桐箱をわざわざ用意してたくらいだから」
「ふぅん。偽物の本物、なんて何だかおかしい感じがするけどな。どうせなら本物をくれればいいのに」
「そうよねぇ。まあ、あのお姫様が欲しがってた宝物だったみたいだし、誰かにくれるなんて事なさそうだけど」

偽物、と知って魔理沙は興味を失ったのか、とことこと元いた壷の上へと戻っていく。
霊夢は相変わらず興味がなさそうに呟いて、変わらず湯呑みを傾けている。
――確かに二人の言うとおり、これが本物でないという事実は、その価値を大きく減じさせる一つの要因ではある。
しかし、これはこれで物語の中にも登場したものの本物であることに変わりはない。
寧ろ、偽物だからと言って簡単に破棄されるべきものが、こうして千年後も残っていたというのはそれなりに価値あるものであろう。
本物よりは格段に落ちるが、それでも中々の価値でには違いないのだ。
――しかし、だからこそ、分からないことがある。

「……輝夜は、どうして君にこれを渡したんだ?」
「どうして、って……餞別だって言ってくれたんだ。それだけさね」
「……ふぅむ」

餞別、とだけてゐは言うが……果たしてそれだけで、贋作であっても千年も残しておいた品物を渡すだろうか?
自分からしたら、その考えは到底理解しがたいもののようにしか思えないのだが。
――いや。そもそも輝夜は悠久を生きる蓬莱人であることを考えれば、そうおかしいことでもないのかもしれない。
彼女にとってみれば、千年などそう大した時間でもないのだろう。
元々月の姫である彼女の価値観もよく分からないし、本当にそんな軽い気持ちで渡したとしても余り不自然には思えない。
まぁ、それならそれでいい、と思うしかないだろう。
それよりも、目下の問題は――。

「……しかし、これを持ってきたのはいいが、一体これと何を交換したいんだ? 君ならこの贋作の客観的な価値を理解しているだろうが、わざわざ輝夜から貰ったものを交換材料に使う必要があるのかい?」

てゐが輝夜から受け取った、至宝とは言わぬまでもそれなりの価値があるこの贋作を材料にして交換したいものが、霖之助には思いつかないのだ。
彼女もそこの魔理沙や霊夢と同じく、この香霖堂にある商品をガラクタだと言いきる相手である。
そのガラクタを対象に、彼女がこんな品を物々交換に持ち出すはずなど通常有り得ない。
何か裏があって然るべきである。
例えば、霖之助が大切にとっておいてある非売品だとか、霧雨の剣に代表するような本当に貴重な品だとか、そういうものを狙っていると思うのが妥当だろう。
となれば、場合によってはこの交換そのものを断るべきでもあろう。
確かにこの道具は貴重だが、非売品やもう二度と手に入らないほどの道具と天秤にかけるほどのものではないのだから。
――そんな霖之助の問いかけに、てゐは少しだけ、困ったような表情を浮かべた。

「んー……って言うか、ぶっちゃけないんだよね」
「……ない? どういうことだ?」
「ないって言うか、『品物の指定はない』ってことかね。私が頼みたいのは、何でもいいからこれと同価値のものと交換して欲しい、ってこと。物々交換の基本よね」
「それは確かに基本だが……同価値であれば何でもいいのか?」
「出来れば私の興味があるものの方がいいけど、基本的には。ま、その辺は霖之助の古道具屋としての力量にかかってくると思うから、あんまり余計なことは言わないけど」
「……む」

確かに、この『道具と同価値』というだけの縛りで品を選ぶとなると、自分自身の道具を見る目だけが頼りとなるわけだから、てゐの言っている事は正しい。
と言うか――これはもしかして、てゐに試されているのだろうか。
何を今更試す事があるのだろうか、とも思うし、未だにどういう意図でこの交換を望んでいるのか分からない不透明さが訝しく思えもするが、はっきりとした対価を差し出している以上、彼女はれっきとした客でもある。
とりあえず、交換する品はこちらで選んでいい、と言っているし、まずは要求に答えながら様子を見るのが得策であろうか。

「……分かった。じゃあ、少し待ってもらえるかい?
 これと同じ価値の品となると、ここにあるものでは望みが薄いからね。奥を少し見てくるよ」
「ふむふむ。流石にここのガラクタで鯛を釣ろうとは思ってないみたいだね。ま、それが正解さね」
「……正解も何も、香霖堂は正当な取引のみを心がけているんだから、そんな事あろうはずもないんだが」
「はいはい。とりあえず行ってらっしゃいな」
「……はぁ」

ひらひら、と満面の笑みで手を振るてゐに溜息を残して、霖之助は奥へと足を向ける。
――向かう先は、店頭には置いていない品物を置いておく、香霖堂の倉庫である。
主に非売品が置かれている倉庫だが、その他にも店頭に置くには少々価値の高い品物も置いてある場所だ。
てゐが持ってきたあの蓬莱の玉の枝の贋作は、彼女の言うように店頭に置いてあるものでは充足は無理だった。
かと言って非売品を出すのは論外だが、それ以外でなら許容は出来るほどの対価ではある。

それに霖之助としては、あの贋作に些か無視出来ない程度の興味もあった。
――実は、車持皇子があの贋作をかぐや姫に献上した際、あれを贋作と指摘した者はかぐや姫を含め、ただの一人もいなかったのだ。
贋作である事実が露呈したのは、ただ単純にあの道具を作った職人本人が暴露したからに過ぎない。
かぐや姫ですら指摘出来なかった職人の技術というものは、同じ道具を扱う者として興味を覚えずにはいられない。
そんな道具を手元に置けるのならば、多少の出費は然るべきものだろう。
まぁ、それでも出来るだけ、出費は抑えておきたいのが本音ではあるが。

「……贋作の本物、か。あれと似たようなものとなると……」

倉庫に収まっている品目のリストを思い出しながら、淀みなくその場所へと霖之助は歩みを進めた。


 ◇ ◇ ◇


「……なぁ、そこの兎」
「ん? 呼んだ?」

霖之助が席を外し、てゐが所在なさげにカウンターに頬杖をついていた時。
ふと魔理沙に呼ばれて、てゐは自身の左後方にいたそちらへと目を向けた。
そちらを向くと、どこか疑わしそうに目を細める魔理沙と――同じような目をした霊夢が、こちらをじっと見遣っていた。

「正直に言ってみ? お前、何の用でここに来たんだ?」
「正直に、って何さ。物々交換しに来たんだって、さっきも言ったじゃん」
「それにしては、交換する品物を指定しなかったじゃない。物々交換って、普通は何かが欲しいからするもんだと思うんだけど」

魔理沙、そして霊夢が続けて言葉を投げかけてくる。
二人が明らかにこちらを警戒して言っているのが、てゐにも分かった。
言葉尻だけでなく、向けてくる視線に明らかな警戒心が滲み出ていたからだ。
――まぁ、霖之助もそうだったが、てゐの人となりを聞けば大抵はこういう警戒心を持つだろうことは、てゐ自身も理解はしている。
いつもならその警戒心を逆手にとって、悪戯なり仕返しなりするのだが、今は残念ながらそんな気分ではない。
と言うか、今はそれどころではないのだ。
故に、いつもの自分らしくないとは思いつつも、実力行使は回避する方向でそれに答える。

「うーん……や、何も欲しくないってわけじゃないんだけど。ちゃんと欲しいものは別にあるんさね」
「へぇ。それじゃ何か? お前はわらしべ長者にでもなろうとしてるのか?」
「……まぁ、似たようなもんかね」
「ふぅん。ま、悪さをしに来たわけじゃなさそうだし、どうでもいいわ。あんまり霖之助さんを困らせるんじゃないわよ」
「同感だぜ」
「……ってか、それをあんた達に言われるのもどうかと思うんだけどね」

霖之助の話によれば、魔理沙は鉄クズという対価を以って、そして霊夢は霖之助にとっては専門外の事を請け負う事によって、彼と品物等をやり取りしているという。
しかし、その頻度と持っていかれる商品の金額が全く釣り合っていないらしい。
それについては霖之助も常々嘆いているようだが、まさかその張本人からこんな注意を受けるとは思わなかった。
まず鏡を見ろ、という話である。
尤も、霖之助が何度口を酸っぱくして言っても全く効果はないらしいので、てゐもそれを口にはしなかったが。
口にしたところで、藪から蛇を出すだけの行為をわざわざしてやる必要もない。
――と、そんな益体もない事を考えながら溜息を吐いていると、ふと奥からこちらへと歩み寄ってくる足音が聞こえてきた。
他の誰でもない、霖之助のものだった。

「――やぁ。待たせたね、てゐ。色々と見繕っていたら遅くなった」
「ん、まぁいいさね。で、どれと交換してくれるのさ?」
「ああ。色々と見たんだが……これでどうだろうか」
「……んん?」

かたり、と小さな音と共に、霖之助はカウンターに何やら小さな針金のようなものを置いた。
――だが初見、てゐですらそれは、何かの意味不明なゴミにしか見えなかった。
金属の割に錆のようなものは見当たらないが、それなりに傷も汚れもある、先端が湾曲した針金のような何かにしか見えない。
特徴と言える特徴は、その湾曲した先端に鈎針と似たような尖った突起がついているくらいで、他にはその湾曲以外に然したる特徴もないただの針金である。
強いて言うなら釣り針に見えなくもない、それだけの代物だ。
とても輝夜がくれた蓬莱の玉の枝の贋作に見合うような品には見えなかった。

しかし自分と霖之助は、今まで幾度も騙し騙されをやり合って来た関係がまずある。
その過程を考えれば、こんなあからさまな児戯にも劣る偽りを、今更になって仕込むはずがない。
故に、この針金を持ち出してきた彼の意図が、いまいち掴みかねたのだ。

「……えーと、何これ。もしかして釣り針?」
「ご明察、といったところだろうか。少し古いものだから分かりづらいかもしれないが、確かにこれは釣り針だよ」
「……ふーん。て事は何? 私が姫様から貰ったこれと、そのゴミみたいな釣り針が同価値だっていう事?」
「同価値かどうかは、万人が納得する形での確定はしかねるが……少なくとも君が持ってきたその贋作にも引けは取らない、そういう自負はあるが」

じとり、と不審そうにこちらを見遣るてゐの視線に、霖之助は肩を竦めながら答えた。
が、その視線も態度も、説明がない状態では致し方ないだろう。
いきなりこんな釣り針を出されたところで、何の情報もない状態でその価値を正しく理解出来るのは、恐らく自分ただ一人だけだろう。
故に、解説が必要なのだ。
少なくとも霖之助が、客であるてゐの持ってきた道具に対し、真摯に交換対象の道具を選んだ姿勢だけは理解してもらう必要があるのだから。

「君が持ってきた蓬莱の玉の枝は、竹取物語にも登場する贋作の本物だ。それと交換となると、当然それなりの曰くのあるものが必要になる。更に同価値となるならば、それに『贋作の本物』という条件が加わるのが自然というものだろう?」
「……まぁ、同価値のものと交換、って言ったのはこっちだし。それは納得するけど」
「となると、この香霖堂にある道具の中では、この釣り針がその要件を満たす唯一のものなんだ。――てゐ。君は山幸彦と海幸彦を知っているかい?」
「そりゃ知ってるけど……って、え? じゃあこれ、もしかして……」

今まで胡散臭そうに釣り針を眺めていたてゐの目が、驚きで見開かれた。
――やはり彼女は賢い上に鋭い。
だからこそ、彼女ならばその価値を理解出来るだろうと持ち出してきた甲斐があるというものだ。

「そうだ。これは火遠理命が火照命の釣り針を紛失した際、その代償として作成した千の釣り針のうちの一つだ。本来、火照命の持っていた釣り針は神器そのものだが、この代償の釣り針にはその効果はない。しかし、贋作としての釣り針という点では、香霖堂店主の名にかけて本物だと誓おう」
「……なるほどね。だからちっとも錆びてないわけだ。納得したよ」
「ほぅ。そこに気付くのは、さすがと言うべきだろうか」

――古代日本に存在したヒヒイロカネは、当時はありふれた金属の一つであったという。
当然、古代より古である神代に作成された十拳剣を鋳潰して作ったこの釣り針も、それで出来ている。
故に錆がないのだ。
ヒヒイロカネで出来ている、というだけで、この蓬莱の玉の枝の贋作以上の価値を有するかもしれないが、生憎古い曰くのあるもので贋作のものとなると、これしかなかったのだ。
……まぁ、他にもヒヒイロカネのストックはあるし、釣り針程度のものだったら手放しても然程痛くはないという裏事情もあるにはあるが、それをわざわざ教えてやる必要はない。
落としどころとしては、この辺りが最適であろう。

「……そういうわけで、この釣り針はそういう曰くを含め、香霖堂店主である僕が選んだものだ。……さて。それで、君の目から見て、この品物はどうだい? 君の眼鏡に適うだろうか」
「……ん。分かった。これでいいよ」

自信に満ちた霖之助の問いかけに、てゐもにかっと笑いながら頷いた。

「寧ろ霖之助にしてはよく選んでくれたと思うし。落としどころとしては中々いいところを選んだとも思うしね」
「僕にしては、は余計だ。店主としては当然の事をしたまでだ」
「はいはい。……んじゃ、早速これと交換、ってことで」
「ああ。商談成立だな」

霖之助はてゐの持ってきた蓬莱の玉の枝の贋作を。
てゐは霖之助の持っていた、海幸彦の釣り針の贋作を。
それぞれが納得の上で、交換が成立した。
――正直なことを言えば、てゐが相手で、これほど諍いのないまともな交換が成立した事に、霖之助は驚きすら感じていた。
少なくとも今までは、ごたごたがない状態でこんなやり取りが彼女との間に成立した事は一度もなかった。
こうもスムーズに事が運ぶと、寧ろ彼女の狙いはこの交換ではなかったようにも思えてしまうのだが――。

「んで? お前は次にどこにそれを持って行くつもりなんだ?」
「? 持って行くって、どういう意味だい? 魔理沙」
「こいつ、さっき言ってたんだよ。よく分からんが、わらしべ長者になるつもりらしい」
「……ふむ。そうなのかい?」

魔理沙の言う『わらしべ長者』の言葉を聞いて、霖之助の中に先ほど浮かんだ疑惑の半分ほどが氷解した。
道理で、輝夜から餞別で貰ったという贋作をあっさりと手放したわけだ。
あくまであの道具は贋作であり、それ故に本物と比べて相対的な価値は圧倒的に落ちる。
しかしそれでも、物語の中に登場した道具であるという希少性は揺るがない。
まずはそれを足がかりに、更に一段階上の道具の獲得を狙いに香霖堂を訪れたとしても、まぁ納得はいく。
だが――残り半分の疑惑が、余りにも矛盾に塗れすぎている。
本当にわらしべ長者を目指すならば、『この贋作と同価値』などという指定はしないはずだという事実だ。
それではわらしべ長者の意味が全くないからだ。
彼女が本当にそれを狙っているのだとしたら、その一言は余計どころか、その目論見そのものを破綻させかねないものである。
まさかてゐが、そんな事を分からぬはずがない。
故に、霖之助はてゐへと問いかけたのだ。それは事実なのか、と。
――そしてその問いかけにてゐは、珍しく困ったような笑みを浮かべた。

「……んー。や、確かに似たようなもんだとは言ったけど、別に本当にそれを狙ってるわけじゃなかったんだよね」
「……なるほど。ということはやはり、君はこの交換そのものが目的だったわけではない、ということか?」
「ありゃ、やっぱり気付いてたか。まぁそりゃ気付くよね。交換する品物の指定しなけりゃ」

言葉の割には焦ったような素振りも見せず、てゐはただただいつも通りの平静さを保っている。
どうやら彼女からしてみれば、この交換そのものに目的がない事が暴露した程度では、痛手でも何でもないらしい。
となれば、その本来の目的は何なのだろうか。
交換する品物でもない。
その品物による、更なる利益の獲得でもない。
てゐという少女が浮かべそうな目的ではないと、彼女は言う。
では、その目的とは一体何なのか。

「……まぁ、アレだ。私が欲しかったのは、この『同価値のものを交換する』っていう事実だったんだよ」
「……ふむ?」

ぽつり、そう呟いたてゐの表情は、やけに真摯そのものだった。
彼女にしては珍しいその表情を、霖之助はどこかで見たことがあった。
あれは、確か――。

「この餞別もさ。まぁ確かに餞別は餞別なんだけど、ちょっと特殊なものなんだよね。いくら姫様だって、さすがにこんなものをほいほいくれるわけじゃないんだし」
「……いまいち真意が掴めないな。一体どういうことなんだ、てゐ」
「――ん」

カウンターの向こう側に座っていたてゐが、不意に霖之助の目の前に、その手のひらを差し出してきた。
余りにも不意だったので、霖之助は少々面食らったが、その手のひらには何かが握られているわけではない。
完全に空手の状態で、てゐはその手を差し出していた。

「……? この手が、どうかしたのかい?」

差し出された手のひらを手に取りながら、霖之助は尋ね返す。
直後、自分の手が、自分のものよりも一回り小さい手に握られる感触を感じた。
――そしてその質問に返ってきたのは、まるで花が咲いたかのように笑う、てゐの笑顔だけだった。

「――この贋作さ。姫様が結納に使いなさいってくれたんだ」
「――」
「だから、これと同じ価値のものと交換しないと意味がないってわけ。結納ってそういうもんだし。……ちょっと回りくどかっただろうけど、さすがに霖之助でも分かったでしょ?」
「……ああ、そうか。なるほど、そういうことか」

その告げられた真相に、霖之助が真っ先に浮かべたのは苦笑だった。
――何とも、回りくどくて分かりづらい、しかし彼女らしいやり方なのだろうか。
確かにこの蓬莱の玉の枝は贋作であれど、かぐや姫への求婚のために作られ、そして物語中で用いられた唯一の道具だった。
それを『結納として使え』と言われ、こうして同価値のものと交換して受け取ったのだから、その意味するところは他にない。
そして何より、数ヶ月前にてゐとしたやり取りが止めだった。
あれっきり姿を見せず、今になって姿を見せて、こんなやり取りをしたということは、つまり――。

「……それで? 結局、どっちに所属するか、決めて来たのかい?」
「うん。まぁ結構迷ったんだけど――やっぱり旦那の所にいないのって、何かおかしいと思ったから。こっちにすることに決めてきた」
「そうか。……それじゃあ、改めてよろしく、とでも言っておこうか?」
「ん。ま、こっちこそよろしく、かねぇ」

にしし、と、すぐ目の前でてゐは笑う。
――全く。
霖之助にしてみれば、余りにも唐突すぎて、余りにもいつも通りすぎて、未だに実感が湧いてこないというのに。
余りにも唐突すぎて、余りにもいつも通りすぎて、未だに苦笑しか浮かんでこないというのに。
それなのに、目の前にいるこのシアワセウサギは――とても幸せそうに、笑っている。
こちらの気も知らず、ただただ幸せそうに。

「――しっかし、姫様もお師匠様も鈴仙も、かなり吃驚してたよ? 『ああ、やっぱりあの店主、そっちの気が……』って言ってたし、鈴仙には危うく殺されかけるところだったし」
「……いや、その辺りの誤解はきちんと解いてから来て欲しかったが……と言うか、何で鈴仙が君を?」
「ん、まぁその辺は気にしないことにしとくのが一番いいさね。……それに今となっては、何だかんだでそっちの気があることを否定できないと思うんだよね。少なくとも結果的には」
「……いや、それはない、と思うんだが」

――まぁ、確かに結果的にと言うか、絵面的にはそうなのかもしれないが……しかしそれを納得してしまえば、自分の何かが色々と崩れてしまう気がする。
主に常識や倫理といった、知能をもつ生物として一番重要なものが、ものの見事に。
故に、その点だけは今後も、誰が何と言おうと断固として認めるわけにはいかないし、認めることもないだろう。
――この事実が広まるにつれ、この店を訪れるであろう多くの人妖に、その点についてからかわれるであろう事が、今から考えるだけで気が重いが。

「……あー、香霖とそこの兎。何やら盛り上がってるようで悪いが、一体何がどういうことなんだ?」
「こっちは全っ然分かんないんだけど。分かるように話を聞かせてくれる?」

そうして霖之助が頭を悩ませていると、ふといかにも不満そうな魔理沙と霊夢の声が割り込んできた。
二人からしてみれば、自分たちには全く分からない話をしながら霖之助とてゐが手を取り合っている状況が、意味不明であると同時に非常に気に食わない光景であることに違いはなかった。
――何なんだ、その自分たちだけの世界は、と、そういう気分で満ち満ちていた。
そんな二人に、てゐは思い出したかのように二人の方を見遣ってから、呟いた。

「……そう言えば、あの二人は義理の妹ってことになるんかね?」
「いや、血縁としてはそうではないが……まぁ、似たようなものだとは思う」
「うへぇ。何かとんでもない奴らを身内にしちゃった感じなんだけど……まぁいいや。よっと」

二人には聞こえないように悪態を吐いてから、てゐは座っていた椅子から飛び降りると、とことことカウンターを回って霖之助のすぐ傍へとやって来た。
そして。

「とぅ」
「……おい。何で香霖の膝に座るんだ? そこは私の指定席なんだが」

霖之助の膝の上に飛び乗ったてゐに、魔理沙の目付きが更に一段階鋭いものになったのが分かった。
と言うか、魔理沙がここに座っていたのもかなり昔の話であるし、そもそも自分の膝は誰かの指定席になった覚えなどない。
そして何より、てゐもこんな火に油を注ぐような事をしなくとも、言葉で説明すればいいだけではないのだろうか。
危うきには近寄らず、しかし周りに諍いの火種を撒くことを好む彼女にしては、自分もその渦中に陥るであろう場所に火種を撒くとは、らしくないのであるが。

「ん? ああ、そういやそんな事言ってたっけ? でも悪いね、今度から私の指定席になったから。それと近々、私はここに住むことになるから、その辺もよろしく」
「……は?」
「……え?」

てゐの言葉に、魔理沙と霊夢はただただ目を丸くする。
そこに止めとばかりに、てゐは自身のお腹に手を置いて、告げた。
――自分はこの香霖堂店主のものであり、そして香霖堂店主は自分のものであることを。

「あ、あと今後暫く、私は弾幕ごっこ出来ないから。あれ、身重だとかなり負担かかるし。――ね」



『お父さん?』



 ◇ ◇ ◇


――はらり、とページを捲る音が響く。

その音源は他ならぬ、霖之助が本を捲った行為が起因する音である。
が、今霖之助が読んでいるのは、小説でも学術書でも外の世界の本でもない。
自分が幻想郷の歴史書として残す事を目的として書いている日記を、昔を振り返ろうと急かされて、久方ぶりに昔の日記を引っ張り出し、こうして読んでいるのである。
それを急かした相手は他でもない。
今現在、自分の膝の上に座り、けたけたと笑っている少女――てゐである。

「あー、そういやこんな事もあったねー。いやはや、あの時のあの二人の驚いた顔と声って言ったらなかったね。鼓膜持ってかれるかと思ったよ」
「いや、実際笑い事じゃなかった気がするんだが……。あの後、あの二人からは泣き付かれるわ文句言われるわロリコンだと罵倒されるわ、終いには僕がロリコンだったら自分たちでもいいじゃないかとか意味不明な事を言われるわで、こっちは堪ったものじゃなかったよ。暫くずっと店に入り浸っていたし」
「んー、まぁ確かにそうかもね。あの二人があんまりにも本気だったから、私もお師匠様に霖之助が浮気出来ないようにする方法を聞きに行ったしね。割と真剣に」
「……待て、それは初耳なんだが。その方法、試してはいないだろうね?」
「うん、試してはいないよ。お師匠様に黒魔術に詳しい魔女を紹介されて、紅魔館にまでは行ったけど」
「……そうか。まぁ試していないなら、それ以上深くは聞かないことにしよう」

紅魔館ということは、永琳はパチュリーを紹介したのだろうか。
恐らくは黒魔術の類を利用する腹積もりでいたのだろう。
しかし、よりによって黒魔術を用いた方法を紹介する辺りが、何となく本気さを感じさせる。
そういう意味では、永琳も身内思いだと言えなくもないのだろうが、その対象となりかけていた身としてはただただ鳥肌が立つ。
幸いなのは、その方法を実践されなかったことだろうか。
パチュリーはアリスや魔理沙と違い、生粋の魔女なので、その見た目の儚さとは裏腹に、自身の専門である魔術となれば一切の妥協をしないだろう。
その気性が最も恐ろしいと言うか何と言うか。
魔女とは本来恐ろしいものなので、それは別に間違ってはいないのだが。

「……あのさー。確かに私が話題に出したのが悪いんだろうけど、他の女の事をじっと考え始めるのはどうかと思うんだけど。何? 教えてもらった奴を試して欲しいの?」
「……冗談でも止めてくれ。そんなものを使われるようなことをするつもりはないよ」
「うん、よろしい」

そう明確に答えてやれば、てゐは実に満足そうにこちらに寄りかかってきた。
――尤も、てゐ自身も霖之助の妙な義理堅さはよく知っているので、半分以上は冗談で言っているに過ぎない。
それでもやはり、不安は拭いきれるものではないのが正直なところだ。
未だに霖之助が、自分はロリコンではないと言い張っているところとか。
事実だけ見たらどう見ても違うのに、そこだけは頑なに認めようとしないところに若干の不安を感じるとか、云々。
まぁ、そんな事は間違っても口外はしないが。

「――あー! お母さん、またお父さんの膝に座ってるー」
「あ、ホントだー。今度は私の番って言ったじゃん!」

ふと、自分たちの後ろからかかった可愛らしい二つの声に、霖之助もてゐも振り返る。
その目線の先には、銀色の髪の毛に白い兎の耳がぴょこぴょこ揺れる、二人の兄妹が不満そうに頬を膨らませていた。
そんな二人を見て、てゐは少しだけ、その二人の子供達と似た不満そうな雰囲気を込めた苦笑を浮かべた。

「――あーあ、見つかっちゃった。せっかく初代から掠め取ったのになぁ。ま、意外と居心地いいから分からないでもないけど」
「……その初代からずっと言っていることなんだが……僕は椅子じゃないんだがね」

二人分の可愛らしい不満の声と、一人分の苦笑の声と。
そして一人分の深い溜息が、今日も香霖堂店内に元気にこだました。


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コメントコメント


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楽園はここにあったのか…
もう悔いはない。

のた | URL | 2012/05/03 (Thu) 01:13 [編集]


淡色さん、どうもお疲れ様です。
幾ら時間がかかっても僕は淡色さんの次回作を待ちますので、ゆっくり、リラックスしながら……そして最高の作品をお待ちしております。
今回は!! まさかの結婚!! 物々交換の話と思いきや、物語の佳境でビッグバンが起こりましたね! しかもこれは、てゐからのプロポーズですか!?
回りくどいやり取りが彼女らしくて、これまた良いです。
しかし、霊夢と魔理沙のフラグをバッキバキに折ってしまいましたが……その他、霖之助を好いていた各々を含めると、かなりのフラグを破壊した事になるけども、二人が幸せならそれで良しですね! (取り敢えず合掌)
でも、霊夢と魔理沙が霖之助とてゐの関係に耐えきれずに、以前の星ちゃんみたいに逆夜這いする話も面白そうな気がします。 もしろ僕が逆夜這いされたいっすwww
それでは、また次回もお待ちしております。
頑張ってください!!

OG-Thompson | URL | 2012/05/03 (Thu) 02:30 [編集]


あれ……てゐってこんなに可愛かったっけ……?

前作を読み返してから読ませてもらいました。やー、相変わらず素晴らしいですね。
安定したクオリてゐ、読み応えのある文の長さ。どっちも自分には出せないものです。

これからも頑張って下さい、楽しみにしています。

ps.ネチョの書き方教えてください(切実)

| URL | 2012/05/03 (Thu) 10:16 [編集]


オッスひさしぶり
てゐの一人勝ちだな、霖之助は無意識に家族を求めているんだなとおもったぜ
ロリコンじゃないな、年齢でいったら遥かに上だしww

魔理沙や霊夢に対して魔術を使わなかったってことはおとなしくなったってことか、いやそんなわけがない
先回りして細工をしていたに決まっている
そして霖之助拉致監禁して居るんだろう、もちろん
いまてゐが見ている幸せな家庭は、鈴仙の目によって紅魔館に来る前に狂わされていて・・・・うぁやめ・・なにお・・・

猟奇王 | URL | 2012/05/03 (Thu) 18:28 [編集]


てゐの単独大勝利だと!でも鈴仙が何とかしますね分かります。

久しぶりです。またSSを見られて嬉しいです。

ナズーリンが無縁塚の近くに住んでいることはいろんな妄想ができるようにしますね。 ウフフ

| URL | 2012/05/03 (Thu) 20:19 [編集]


お幸せに~wwwww

ふと…兄妹…つまり次からは息子が狙われるんですねw

ロストナンバー | URL | 2012/05/03 (Thu) 20:46 [編集]


 
 

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